まずは、相手の言いぶんを受け入れてみよう

社会問題を起こした会社や組織などが公開の場で弁解をするとき、言い訳として、「悪いことをしたのは、ほんの一部の人間です。組織全体としては健全です」と主張することが多い。

たしかにそれは事実かもしれないが、一部の突出したレアケースに強い印象を抱き、そのために、それを特例として考えず、一般的なケースであると思うという人間心理のあることも考えておかなければならない。

たとえば、たまたま入った店で店員の接客態度が悪かった場合、人はたいていの場合、「この店は店員教育がなっていない」とか、「近ごろの若い店員は、客を客とも思っていない」というふうに考えてしまうことだろう。

それは偏見ではなく、一事が万事と思ってしまうからである。

そうした一事が万事という意識が植えつけられてしまったときには、あとで懸命にプラス情報を与えても、それを信じられなくなるという心理になってしまう。

もともとよい印象は記憶から消えやすいが、悪い印象は消えにくい。

子ども時代にした善行より、悪行のほうを、年をとってもよく覚えているというのも同じだ。

クレームを持ちかけられたとき、最も相手に好感を持たれる姿勢は、まず慇懃(いんぎん:真心がこもっていて、礼儀正しいこと。)な姿勢で、受け止め突っ張らないことだろう。

もちろん、相手が無理難題を持ちかけてきたなら何も謝ることはないが、自分のほうに非があるときは、即座に謝ったほうが印象はよくなる。

相手の言い分が正しいことを理解しているという態度で接すると、あとあとの処理がうまくいきやすい。

たしかに、頭を下げると全面的に責任をかぶってしまうような気がしてしまうが、どのくらいの責任をかぶるべきかは、あとの交渉にゆだねればいいことだ。

まずは、相手の主張を受け入れるという姿勢を示すことで、相手の厳しい追及をかわすことができる。

こうして話し合いを重ねていけば、相手もそのうち、譲歩の姿勢を示してくるようになるはずだ。

ウマがあわないとお互いに感じる場合、どちらか一方でもグッと我慢して譲ると、案外うまくいくものだ。