中年になると、身体の衰えだけでなく、脳の記憶においても衰えが出てくる。

よく言われるのが、

「本を読んでいても、なかなか内容が頭に入らない」

「テレビに出てくる若いタレントの名前がさっぱり覚えられない」

など、もの忘れしやすくなったという人が増えてきます。

 

では、「年とともに忘れっぽくなる脳」の中味は、どうなっているのでしょうか。

ある情報を記憶するときは、無数の神経細胞が動員されます。

じつは、この神経細胞には、

「非常に優秀なもの」

「さほど優秀ではないが使えるもの」

「ほとんど使えないもの」

があり、使い勝手は均一ではありません。

 

そして私たちは、記憶という作業をするとき、無意識のうちに優秀な神経細胞から順に使っているのです。

若いころは、より優秀な神経細胞を使って記憶しているのですが、年をとればとるほど優秀なものは残り少なくなり、しかたなく働きの鈍いものを使って、記憶することになります。

働きの鈍い神経細胞の組み合わせでは、信号の伝達スピードも遅くなり、覚えるのにも、思い出すのにも時間がかかってしまうのです。

しかし、だからといって、覚えられなくなるわけではありません。

脳には大脳皮質だけでも約140億個もの神経細胞があります。

20歳を過ぎると、神経細胞は毎日2万~10万個死んでいくといわれていますが、最近では、この細胞死は長期記憶や学習に必要なプロセスであるともいわれています。

 

つまり、考えられるのは使えない神経細胞をさっさと処分して、できるだけ使いやすいものを残そうとしているのではないかということです。

優秀な神経細胞が豊富にあるうちはいいのですが、そうでないものがたくさん残ってくると、使えるものと使えないものの判別がややこしくなります。

そこで、いらないものから順に死滅させて、できるだけスムーズに記憶できるようにしているとも考えられるのです。

 

ただ、神経細胞の死滅のしくみは複雑で、不明な点が多いのも事実です。

ですから、使っている最中の神経細胞や、まだまだ使える神経細胞を死滅させてしまうこともあります。

それでも、残された神経細胞がうまくネットワークを組むことができれば、思い出すことができますし、これから覚えることもできるのです。

そのためには頭を使うこと、記憶の回路を繰り返し使うことが大切です。