相手との共通点を見つけて、仲良くなろう

親身な関係をつくり上げるためのとっかかりで最も適切な方法は、相手との共通点を見つけることだ。

たとえば、同県出身であるとか、同じ大学の出身者であれば、本来はそんなことは関係ないことなのに、なぜか意気投合してしまうことが多い。

それは互いに共通点を見出すことで絆(きずな)ができるからである。

 

たとえば、相手が農家の出身なら、「私もそうだ」と、自分も同じ生い立ちであることを相手に告げるといったことだ。

この場合、たとえ農家の生まれではなくても、農村の風景や農村生活の体験など、自分が知っていることを述べるだけでも相手の共感を呼ぶようだ。

共通のつながりを見出すための話題探しは、どんなものでもいい材料になる。

 

朝食はご飯にみそ汁派か、トーストにコーヒー派かといった、ごくありふれたことでもいい。

子どものころの遊びの話や、どんな映画を見たかといった話でもいい。

洋画好きと邦画好きというちがいがあっても、同じ映画好きということで結束できる。

 

ともかく、「私も」と言えるような話題が探せればいいのだ。

それがなかなか探せなければ、相手が言ったことに同意すればいい。

「私も、それが好きなんです」 とか、「私も、そのことについては、特にこだわっていまして」などと共感を表明すれば十分だ。

たとえ相手に素直に賛成できないようなことが見つかっても、それをストレートに口に出すのは抑えたほうがいい。

ちがいを明らかにするよりは、むしろ、同じものがないかを探すほうがよい結果を生むのだ。

 

また、一緒に食事をするというのも、人間関係において親しさを増すためには効果的だ。

「ちょっと言いたいことがあるんだが」と正面切って持ちかけると、相手は何を言われるのかと緊張を強いられ、ぎこちない対応をしがちである。

しかし、「近いうちにメシでも一緒に食おう」と持ちかければ、相手はスムーズに乗ってくることだろう。

食事を誘われるということは、何か言いたいことがあってそうしているという予感を与える。

しかも、ストレートに何かを言われたわけではないので、食事に行くまでに心の準備をする余裕が生まれる。

実際に食事をしている場で話が持ちかけられたときには、すでに心のウォーミングアップができ上がっていて、すんなりと話題に入り込むことができる。

同僚や上司と部下との間で一緒にお酒を飲むことが多いのは、そうしたソフトランディングのコミュニケーションをはかりたいという意識が根底にあるからなのだろう。

 

また、心理学の実験でも、飲食しながら説得した場合と、何も飲み食いしないで説得した場合とでは、説得効果にかなりのちがいがあったという。

どうして飲食が説得に役立つのか。

理由は明確にはわかっていないが、食事をすることで精神的にリラックスするために、相手の言葉を受け入れやすくなるからではないかと思われている。

緊張している人にお茶を勧めたのは昔の僧侶だったが、お茶も食事も心を解放する効果がある。

親密な人間関係をむすびたいと思った人には、食事やお茶に誘うのがいいということであろう。

 

事実、江戸時代に農民が代官所に殺気立って直訴にきたとき、代官は「まあ、メシでも食べなさい。あとでじっくり話を聞こう」と言って話を丸く収めたそうだ。

 

若いカップルも、食事をすると一気に親密度が増すものだ。

仲良くなりたい異性がいたら、何とか食事に誘うといいということは言うまでもない。