いざというとき、「自分に何ができるか」

たとえば親の病気に直面したとき、あなたは何をするだろうか。

すぐに救急車を呼んだり、「とにかく大きな病院に連れていこう」と、車を走らせないだろうか。

一刻を争うような深刻な病状であればそれもいいかもしれないが、親にかかりつけ医がいるのなら、まずそちらに連絡をするのが賢明である。

なぜなら、かかりつけ医は日ごろから親の体調を診ているので、その病状が何を意味するか、専門的な治療や検査が必要か否かを的確に判断できるからだ。

そして、必要となれば、それにふさわしい医療機関を紹介してくれる。

 

素人はすぐに「とにかく大きな病院なら安心」と思いがちだが、専門家でなければ、どの診療科を受ければいいかは判断できない。

知らない病院で、さまざまな科をたらいまわしにされるより、かかりつけ医の紹介状を持って別の病院に行けば、短時間で必要な医療を受けられる。

また、別々に暮らしている子どもは、親が入院した際に、どこに何があるかがわからず、あわてふためいてしまうことも多い。

入院に必要な寝巻や洗面用具などは病院の売店で手に入れられるが、健康保険証や老人保健医療受給者証(75歳以上)などはあらかじめ保管場所を決めておくといいだろう。

 

さらに、最近では長期間の入院が減って、短期間で退院を迫られるケースが多い。

こんなとき、「え、もう退院しなきゃいけないんですか」とあわてないように、あらかじめ入院期間の目安を聞いておくといい。

医療機関では患者やその家族に対して、入院から退院までの治療計画を知らせる義務があるので、もし、そういった話がないようなら、「入院治療計画書をいただけますか」と申し出るといいだろう。

これは、すべての医療機関で交付が義務付けられている。

退院のめどがわかれば、家族はその準備ができるし、患者にとっては治療の励みにもなるだろう。

 

また、退院に際しての医療費の支払いや、退院後の自宅療養について不安が残る場合には、病院の医療相談室を訪ねてみよう。

そこには医療ソーシャルワーカーという専門職が常駐しており、患者や家族の相談に無料で応じてくれる。

いざというとき、テキパキ動ける40代は頼もしい。

あらかじめ将来起こりそうな状況を想定し、「こうなったら、○○する」「あんなときには、○○する」とシミュレーションしておくことで、親や家族からの信頼も深まるだろう。

「備えあれば憂いなし」の諺(ことわざ)は本当なのだ。