人生後半戦の戦略を立てよう

考えてみれば、社会人になってからこれまでは、平均的に見て約30年、人生80年とすれば、これからも平均的に見て、約30年ある計算になる。

それはまさに「第二の人生」・・・人生の後半戦なのである。

つまり、人生をマラソンにたとえれば、今折り返し点にさしかかったところである。

したがって、「リストラされたらどうしよう」と浮き足立つことはやめて、冷静にこれまでの自分の過ごしてきた道を振り返り、これからの後半を展望し、得意なところは生かし、足りないところは補うべきであろう。

これまでの前半戦はキャリアもない、知識も技能もないという、ないない尽くし、あるのは「若さ」だけのスタートだった。

それに引き換え後半戦は、キャリアもつんでいるし、技能も常識もある。

前半戦に比べて見劣りするといえば、「若さ」だけである。

だが、過ぎてみれば「50代はまだまだ若い」のである。

 

少なくとも、60歳の定年を過ぎてから環境変化に気づいてアクションを起こそうとするよりは、すべてが柔軟に対応できるはずである。

というわけで、今訪れている「試練」は「チャンス」と受け止め、あらゆる知恵、キャリアを動員して、これからの後半戦の「人生戦略」を練ろうではないか。

 

むしろ怖いのは、この時期に何の試練も変化もなく、60歳で定年を迎える人たちの老後である。

たとえば、公務員はその典型だ。

公務員は、不況をよそに雇用は確保され、しかも60歳の定年まで安定した収入が得られる。

民間人から見れば、うらやましい限りの境遇にいる。

しかし、この人たちが今なにもしないまま60歳になり、定年を迎えたときを想定してみたら、何と恐ろしい未来が待っているかを忘れてはならない。

すなわち、仕事がなくなる、収入は年金だけ、友だちもいない、ステイタスも誇りもない「ただの孤独な老人」になってしまう可能性も大である。

そういうことにならないように、「まだ若い」「体力も気力も充実している」50代のうちに何をしたらよいか、人生後半の戦略をじっくり練って、実行していこう。

 

第二の人生にまず必要な「発想の転換」

今、多くのビジネスマンに、50代あるいはそれ以前に、一つの転機が訪れる。

それはリストラ、出向、あるいは昇給ペースのダウンやストップ、管理職からの降格などいろいろな形をとることはすでに見たとおりだが、最近では大企業、中小企業を問わず「突然の倒産」「閉店」という、よりシビアな形をとるようになった。

というわけで、これまであなたが大企業に勤めていたとすれば、転出先の関連企業などをはじめとする「中堅・中小企業で、何が待っているか」という点が当面のテーマになる可能性が高い。

これまでの勤務先が中堅・中小企業の場合は、「引き続きその会社で何が待ち受けているか」ということである。

いずれにしても、

中堅·中小企業で、どう過ごすか

が、この年代のビジネスマンにとって共通の課題となることはまちがいない。

これを①コースと呼ぶことにする。

もちろん、このほかにも次のようなコースがある。

②同大企業や官庁に勤めていて、(役員に就任する場合も含めて)引き続きその組織に勤める

③長年勤めた会社を辞めて独立自営する

④早々と仕事から引退して悠々自適(ゆうゆうじてき:のんびりと心静かに、思うまま過ごすこと。)で過ごす

⑤NPOなどのボランティア活動に専念する

というコースも、これからは広がりを見せるにちがいない。

 

どのコースをとるにしても、先立つものは「経済的基盤」であろう。

特に、④と⑤というコースは、かなりの経済的ゆとりがないと実現困難である。

その点、①と②のコースなら、経済的不安はいちおう解消される。

③のコース、すなわち独立自営を考えた場合は、非常にめぐまれる場合と、逆に借金に追いかけられる場合とに分かれる。

こう考えると、やはり「先立つものはカネ」ということになりそうだ。

だが、ここで考えなければならないのは、第二の人生においての仕事の位置づけが、生活のため、あるいは収入を得るための手段でいいのだろうか、ということである。

結論としては、それではいけないと私は考えている。