「あの人はいいな」と考えるのは不幸ぐせ

「隣の花は赤い」や「隣の芝生は青い」は、どちらも「他人のものは自分のものに比べるとなんでもよく見えて、うらやましく思える」という意味のことわざだ。

しかし、これはモノだけにあてはまる言葉ではない。

他人の地位や生活環境なども自分よりよく見える場合は多々ある。

 

会社勤めをしている人は自営業の人を見て、「上司も部下もいない自営業はいい。自分が社長だからな。好きなように仕事ができるなんてうらやましい」と思うかもしれない。

しかし、自営業の人にしてみれば、「勤め人はいいな。大きなミスさえしなければ、必ず給料をもらえるし、病気で休んでも保障があるから」と思うだろう。

 

つまり、どちらにも利点と欠点があるわけで、どこか一部分だけを取り上げて、あちらが上だ、そちらのほうがラクだと比べるのは極めてナンセンスである。

しかし、他人をうらやましいと思う気持ちは必ずしもマイナス面ばかりではない。

なぜなら、「うらやましい、自分もああなりたい」という気持ちが目標に向かう原動力にもなるからだ。

もともと会社勤めをしていたけれど、独立開業した人のきっかけが、「自営業は自由でいいと、うらやむ気持ちだったという話は珍しくない。

ただし、なんでも「あの人はいいな。それに比べて自分は・・・」、マイナスに考えるのは好ましくない。

 

本来、人間は一人ひとり違うものなのだから、「あの人はあの人、私は私」という考えが基本であるべきだ。

それなのに、他人と違う点をマイナスばかりにとらえると、どんどん気持ちが沈んでいく。

そして、せっかく良い面を持っているのに、ねじまがった見方をして、「どうせ自分はダメだから・・・」と、自分をおとしめてしまうのである。

 

40代になると、会社でも私生活でも、なんとなく行きつく先が見えてくるという。

たとえば、仕事のうえでは部長どまりで退職し、その後は地元でボランティアなどをして老後を過ごす、という将来が見えたとしよう。

これを、「結局は役員にもなれず定年になって、あとは地元で暮らすだけか・・・。ああ、つまらない人生だ」と、思う人もいるだろう。

しかし、「どうにか退職金をもらえるまで働けそうだ。そうなったら、あとは地元でボランティアをやって、体力の続く限り人の役に立ちたい。ああ、穏やかで良い人生だ」と思う人もいるだろう。

つまり、物事は考え方ひとつで幸にも不幸にも変わる。

いのちの詩人として有名な書家の相田みつを氏は、「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」という言葉を残している。この言葉の意味を、40代の人には深く考えてほしい。