何人かの人が集まれば、違う意見があって当然です。

本来ならば、その異なった意見をまとめ上げてゆくのは所属長の仕事です。

実際の話、まとめ役も調整役もいない部署では、いつまでも結論を出せず、だらけたムードになったり、感情的な罵り合い(ののしりあい)に発展してしまったりすることも多いようです。

しかし一方で、役職者ではないのに影響力を持ち、しっかりと意見を集約していく人もいます。

「なるほど、Hさんは全面的に賛成なんですね。Kさんは反対。Dさんは工期の問題さえクリアされれば賛成で、Mさんは予算的に無理だという意見ということでいいでしょうか。私、思うんですが、会社の方針としてやらなくてはいけないことなので反対といってもしかたなく、工期と予算をクリアするための方法を今週中にもう一回、考え直すということで、とりあえずやる方向で考えてみましょうよ。私は、いままでの業者を使わなければ、なんとかなるような気もするんですよ。やるだけやってみて、それでも無理なら、部長に数字を見せて無理だといったらどうですか? ねえ、課長」

反対意見をいうわけでもなく、ただ賛成するわけでもない。

みんなが反対しにくい結論を見いだし、反論しにくい話し方をすることによって、長々とした会議にけりをつける。

これは誰にとっても、うれしいことではないでしょうか。

こういう話の交通整理ができる人こそ、リーダーとなるべき存在として、仕事場で認められてゆくのでしょう。

職場では、仕事への能力を発揮することも評価されますが、多くの人の信頼を集めた人が人望を得ます。

「人望がある」、それは情報も人脈も権力も集まってくることを意味します。

とくに飛び抜けた実務能力があるわけでもないのに、なぜか組織を牛耳っている人は、そういう調整能力が優れている人なのです。