ささいなことでイライラして、キレる「ごく普通の人」が大幅増加しています。
突然怒り出す人を日常よく見かけます。
駅や空港、病院などの公共の場で、ささいなことでキレてしまい、駅員や職員に手を出したり、言い寄ったりする人が目立っています。
私鉄やJRがまとめた調査によると、駅員などへの暴力件数は増加傾向にあり、二〇一○年度は八六八件と二〇〇六年度に比べて、三割増えたといいます。
駅員が客同士のトラブルの仲裁に入って殴られる、自動改札機に定期券を忘れた客に声をかけて殴られる、寝入った酔っぱらいに終電や終点を告げただけで暴力を振るわれるなどのケースがあるのです。
暴力に至らなくても、詰め寄ったり、暴言を吐いたりする迷惑行為は後を絶ちません。
最近の特徴は、ごく普通の人が突然、怒り出すことです。
市役所、区役所などの窓口で、大した理由もなく「あんた、失礼じゃないかっ!」と怒り出す、病院での待ち時間が我慢できずに看護師に怒鳴る、店のカウンターで延々と怒鳴り続ける、などです。
しかし、怒った結果、何かよいことがあるのでしょうか。
いや、まったくないと言ってよいでしょう。
怒ることはデメリットばかりであり、ときには人生を棒に振るケースもあります。
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イライラして怒ったあとの時間ももったいない
個人差はあると思いますが、怒りの感情は尾を引きます。
知り合いのある営業マネジャーの場合、「一度怒ると、その日一日は落ち込んで仕事が手につかない」と言います。
よい発想もほとんど浮かばない。
彼の場合、たった五分怒っただけなのに、その日一日が失われてしまうのです。
あるテニスプレイヤーは相手の反則ギリギリのプレーやマナー違反に対し、イライラして集中力を乱し、本来のプレーができなくなってしまいました。
そしてついに「ふざけるな!」と声を荒らげてしまったのです。
その行為は審判から注意を受けました。
自分で大声を出したこと、審判から注意を受けたことで、心拍数は増え、動揺はさらに深まり、彼はそのゲームを落としました。
結局のところ、怒りの感情に支配されたために自分をコントロールできなくなり、本来のプレーができなくなってしまったのです。
イライラが続くと体の免疫機能が低下し病気になりやすい
怒っていると病気になりやすいこともわかっています。
米国のロチェスター大学医学部のデービッド・フェルトン博士は、免疫系と神経系が対話をしていることをつきとめました。
脾臓やリンパ節など免疫系のすべての器官に神経線維が通っており、免疫系の細胞とじかに接触していることを発見しました。
そして、この神経を取り除くと、免疫反応はただちに停止したというのです。
これは、免疫系の主要な器官が、すべて神経線維を介
して脳、つまり、心と結びついている証しなのだそうです。
新潟大学大学院の安保徹教授は、白血球を命令・指揮しているのは自律神経であると述べています。
自律神経には、体を活動的にする交感神経と、休めるように働く副交感神経があり内臓のコントロールを担当しています。
白血球は、頼粒球とリンパ球と単球という三者から成り立ちますが、このバランスの大きな崩れがさまざまな病気の原因になります。
イライラや怒りなど、ストレスによって交感神経を緊張させると頼粒球が増え、リンパ球の産生を抑え、免疫不全になります。
増えた粗粒球の寿命は二、三日で、死に場所となる粘膜などで猛毒の活性酸素をまき散らします。
そのため、粘膜が傷つけられ、潰瘍や炎症を引き起こし、がんの原因にもなるそうです。
なぜイライラして怒らないと幸せになれるのか
イライラや怒りをコントロールすると、人生や仕事で成果を上げ、穏やかで豊かな人生を歩むことができます。
なぜ怒らないだけで、そんなことが起きるのでしょうか。そこには「成果決定のプロセス」が大きく関係しています。
成果が上がるまでのプロセスは、
気分(状態)
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出来事
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考え方(受け取り方)
▼
意思決定
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行動
▼
成果
という流れになります。
すべての根源は、そのときの気分からはじまっているのです。
気分がいいと、起きた出来事をプラスに受けとります。
その状態でプラスの意思決定をして、プラスの行動を起こすことで、プラスの成果につながります。
ところが気分が悪いと、起きた出来事をマイナスに受けとります。
その状態でマイナスの意思決定をして、マイナスの行動を起こせば、マイナスの成果につながります。
つまり気分がプラスだとプラスの連鎖が起こり、最終的な成果もプラスになりますが、気分がマイナスだとマイナスの連鎖が起こり、最終的な成果もマイナスになります。
怒りは当然マイナスの連鎖を起こします。
ですから怒らないほうが、仕事や人生の成果も上がっていくのです。
一つひとつの意思決定は小さなことかもしれません。
ですが気分よく、いい意思決定を繰り返していった人と、イライラしながら悪い意思決定を繰り返していった人では、大きな差になって現れるということです。
わかりやすい例でお話しすると、同じ大学を出て、同じ会社に同期入社したのに、○年経ったら大きな差がついていることがあります。
その原因は、気分のよい状態をつくり、プラスの意思決定をして、プラスの行動をし続けた人と、ネガティブな状況でマイナスの意思決定をして、マイナスの行動をしてきたことによるのではないかと思います。
まとめ
一つひとつはささいなことかもしれませんが、積み重なると大きな差になっていきます。
意思決定の質の差が、人生・仕事の成果の質を変えていくということです。