神経質な人間のプラスとマイナス

神経質な人は、向上心が強い、とよくいわれる。

たしかにそうといえないことはない。

完全欲が強くて、自己を感ずることができなく、理想像に執着する、ともいわれる。

これらの点は確かに正しいところもあるが、実はもっとひらたくいえば、『ガツガツ』しているということなのである。

 

向上心があるといえばきこえはよい。

しかしどうも神経質の人間の向上心は、人間を内実化するような向上心ではないような気がする。

やはり向上心よりは『ガツガツ』している、といった方が適切な気がするのである。

向上心の強い人間は誰でも皆ノイローゼ気味なわけではない。

『あるがまま』という状態と矛盾しているのは、向上心よりも『ガツガツ』であろう。

『あるがまま』という状態は、『あるがまま』になろうとすることではない。

どうしてこうまわりくどくこねくりまわして表現しなければならないのかといえば、神経質の人間が『ガツガツ』しているからである。

 

向上心の強い人間が別にノイローゼになり易いわけでもないし、『あるがまま』でいいといわれてすぐに『あるがまま』になろうとはしないだろう。

『あるがまま』でいいといわれて、すぐに『あるがまま』になろうとする人は、やはり『ガツガツ』している人と表現すべきであるような気がする。

『あるがまま』という状態は何度もいうように『あるがまま』になろうとすることではない。

伸び伸びした状態であろう。

伸び伸びしていることの反対が、『ガツガツ』していることである。

 

『ガツガツ』している人は、楽に生きることができない。

いつも無理している。

無理をして自分から生きることを難しくしてしまっているのである。

後悔してみたところでどうしようもないのにああ、あの時、こうしてさえいれば。

といつまでもいつまでも過ぎてしまったことを悔やんでいる。

そのくせ、それでは将来に対してはその失敗をいかすかというと、決してそうではない。

またああしようか、こうしょうかと悩んでいる。

それほど遠慮することはないのに、思い切ってことにあたっていくことができない。

神経質な人というのは、『ガツガツ』している割りには遠慮している。