ニオイを感じる仕組み
嗅覚について、ちょっと考えてみましょう。
嗅覚とは言うまでもなく、鼻でニオイを感じることですが、はたして、どんな仕組みで感じるのでしょうか?
まず、息を吸うと、空気と一緒にニオイの分子が鼻に入り、嗅覚細胞を刺激します。
この刺激が一種の電気信号となって脳に伝えられ、そこで初めて“ニオイ”, として自覚される仕組みになっているのです。
つまり、ニオイは神経の興奮によって“ニオイ”になるわけです。
快いニオイも、不快なニオイも、感じる仕組みはまったく同じです。
快・不快の判断は、脳が勝手に行っているのです。
ところで、この嗅覚は、三つの大きな持徵をもっていることを知っておかねばなりません。
視覚や聴覚、味覚、触覚などの他の感覚にも同じような特徴がみられるのですが、嗅覚の場合にはそれが際立っています。
Contents
『匂いを感じる仕組み』その特徴について
①順応しやすい
②個人差が大きい
③他の感覚と相互に関連している
この三つです。
『匂いを感じる仕組み』嗅覚は疲れやすい
最初の特徴である“嗅覚は順応しやすいということは「慣れてくる」ということであり、言葉をかえれば「嗅覚は疲労しやすい」ということです。
どんなに快いニオイであっても、不快なニオイであっても、そのニオイを長時間かいでいると、まったくといってよいほど、そのニオイを感じなくなってしまいます。
たとえば、猫を飼っている家を訪れた時など、鼻をつくような猫の糞尿の独持のニオイが気になるものですが、しばらくいるうちに、次第にその家の住人と同様、特別に意識しなくなってしまいます。
におわなくなってしまうのです。
この場合はたいへん都合がよいのですが、快いニオイの場合も同様に、すぐに慣れてにおわなくなってしまいます。
家を新築した時など、新しい檜や畳のニオイは実に快いもので、新築の喜びをかみしめられるものです。
しかし、何日か経っと感じなくなってしまうのは、なんとも残念なことです。
食べ物の場合も同様です。ギョウザを食べた時など、周囲の人には強烈なニンニク臭がするものですが、本人は何もにおわない。
これも、嗅覚の疲労(順応)によるものです。
嗅覚の疲労や順応は、嗅覚の弱点といえなくもありません。
これらは、必要だからこそ備わっている特徴なのです。
たとえば、ずっと同じニオイがしていて、我々がそれを感じ続けたとしましょう。
心理学的にいえば、かなり短時間のうちに、精神的な動揺、イライラが生じるはずです。
とすると人間は、嗅覚が疲労(順応)することによって、大いに助けられていることになります。
確かに、朝の満員電車では、色々なニオイ (体臭、口臭、たばこ臭さ、整髪料や化粧品、香水のニオイなど)が混じり合い、はじめのうちは、がまんできないくらい不快に思うこともありますがしばらく気をまぎらわしているうちに、たいして不快感を感じなくなってしまいます。
もし、嗅覚が順応することなく、最初の不快なニオイがいつまでも “新鮮”に続くようでは、電車の中で神経がまいってしまい、一日中不快感とイライラが続き、やがて電車に乗ること自体に嫌悪感をいだくようになるに違いありません。
この場合は、ニオイに慣れることによって不快感から解放される代表的な例といえます。
反対に、嗅覚が疲労(順応)することによって、生命そのものが危険にさらされることもあります。
ガス漏れなどはその例で、少量ずつ漏れている時など、知らぬ間にガスのニオイに慣れてしまい、結果、生命を落とすことにもなりかねない、というわけですあ