どんなに疲れたときでも、床につくのが深夜に及んだときでも、寝る前には必ず好きな模型の雑誌や本を読む。
こうした趣味の本に夢中になっていると、心のうさもいつのまにか晴れている。
私のようなウツかなと思われる状況を経験してきた。しかし幸いに重くならず、いつのまにかその状況から脱却することができた。
趣味は、私がウツから脱出するのを助けてくれる強力な助っ人の一人だ。
趣味はそれこそ千差万別だ。
なにをやってもいい。
私が忠告したいのは、趣味をもつなら、できるだけ一人で楽しめるものがいいということである。
他人とグループをつくったり、ライバルがいる場合は、どうしても競争心が湧いてくる。
それが適度なら励みになることもあるが、もし他人のレベルより自分が劣っている場合はかえって心が落ち込み、逆効果になってしまう。
劣等感をさっさと優越欲求に転ずることのできる人は別だが。
そして、なるべくなら奥の深いものが望ましい。
本当の楽しさを知るのに数年かかるといったものがいい。
短期間ですぐに底が知れる趣味では、生きがいにならないからだ。
また、できるなら三十五歳から四十歳くらいまでには、自分の趣味を確立しておいてほしい。
脳細胞の減少や動脈硬化といった老化現象が、そのころからそろそろはじまるからである。
趣味をもっている人は、心身が衰えるスピードも遅くなる。
仕事が忙しくて趣味をもつ暇がないというのは、趣味をもたない理由にはならない。
よく「定年になったら趣味に生きる」という人がいるが、暇になって、「……でもするかかない」とはじめる“でもしか趣味。
だけが趣味だと考えていると大間違いをする。
暇つぶしイコール趣味ではないのである。
趣味は暇つぶしのためにするどころか、逆に暇をつくって行なうものだ。
それだけ積極的な姿勢がいる。
だから、忙しい人ほど趣味をもつべきなのである。
せっかく生まれてきたのに、日夜仕事ばかりして自分の時間がないというのでは、生まれてきたおもしろ味がない。
どんな趣味でも、趣味をもつことによって生きかたに幅が出てくる。
そして、忙しい時間をさいて趣味のための時間をいかに有効につくったらいいかと頭を使うことが、仕事の効率をあげることにもなる。
趣味をもつだけで、人生はこんなに波及効果を生むのである。