「評判の悪い人」には、中途半端に関わらない
テレビで近隣トラブルの特集を組んでいた。
あるマンションの住人が、自室のドアに卵を投げつけられるという事件が続いた。
そんなことをされる覚えはないので、管理人と相談して小さなカメラを設置した。
すると、下の階の住人が深夜にそれをやっているのがわかった。
管理人に間に入ってもらって話し合ったところ、「夜中に騒ぎ立てるからだ」といわれた。
だが、その時間帯は熟睡しているから騒げるはずもない。
よく調べてもらうと、騒いでいたのは下の住人の隣に住む人だった。
配管を通して「上から音が響いている」ように聞こえていたのだという。
最近は、こういうトラブルが多い。「迷惑をかけられた」と勝手に思い込み、放火したり刃物で切りかかったり、という物騒な事件もある。
それにしても、なぜ、いきなりこうした過激な展開になるのか。
卵を投げつける前に、 「夜中の物音が気になるんですが」といえばいいではないか。
そんな簡単なこともできないのは、日頃からの距離が遠すぎるからだ。
たまにお天気の話でもしていれば、「ごめんなさい、小さいことなんだけど・・・」と切り出しやすいし、指摘された相手も「気づかなかった。いってくれてありがとう」となる。
お互いにとって、いいところに落ち着くはずだ。
もちろん、いくらこちらが友好的に接しようとしても、そうならない相手もいる。
いわゆるトラブルメーカーだが、そういう人は、挨拶の段階からどこかおかしい。
定年退職した男性が、妻と二人で郊外に引っ越した。
夫婦二人で暮らすにふさわしい小さな中古マンションに買い換えたのだ。
同じフロアには、変わり者で通っている独居老人が住んでいた。
かなり嫌われているようだった。
一度、エレベータで一緒になったときに挨拶してみると、相も変わらず愛想のかけらもない。
だが男性は、「あまり、この老人を孤立させても」と思い、一度部屋に招き入れて一緒にビールを飲んだ。
すると、それからときどき訪ねてくるようになった。
いきなりやって来るのも困りものだが、もっと困ることが起こった。
その老人が妻にイヤらしい話をするのだ。
さらに、老人は、妻について「色狂い」などと吹聴して回っている。
あわてて火の粉を消しに走ると、マンションの人たちはすぐに理解してくれた。
これまでにも、同じような問題行動がたびたびあったようなのだ。
男性は、軽はずみに老人に近づいたことを反省するしかなかった。
もちろん、この老人にも同情すべき点はあるだろう。
なぜ、あえて嫌われることをするのか。
その根本原因を誰も解決してあげないから、老人はさらに孤立する。
しかし、そこまで深入りするには覚悟がいる。
したがって、そのような人に中途半端に近づくのは、やめたほうがいい。
評判が悪い人には、それなりの理由がある。
それをかき回してトラブルを大きくするのは、賢い人間のすることではない。
あえて人を傷つける必要はないが、少し距離をとって落ち着いて観察するべきだろう。
ときどき、「周囲がそういう状況だからこそ、俺だけは理解者でいてあげなくてはという正義感にかられる人がいる。だが、そう思い始めると、相手の欠陥が見えなくなってしまうから要注意だ。
私自身は、あまり一定の人間を嫌うこともしないし、世間の噂にもとらわれない。
他人のトラブルに自ら介入する必要はまったくない。