意外と知られていない「腰痛とストレス」の関係
40代の男女にとって、腰痛はもっとも身近な疾患のひとつだろう。
ただし、これほど多くの患者がいる病気なのに、腰痛にはまだ謎が多い。
診察を受けても原因がわからないケースも少なくない。
腰痛のなかでも腰椎に異常が起こるものは原因が特定しやすい。
代表的なものには、椎間板へルニアや圧迫骨折、骨粗しょう症などがあるが、実は腰痛の80%以上は原因不明といわれている。
これまで腰痛を起こす原因としてよく知られていた椎間板へルニアも、自然回復する例があり、最近では腰痛の主因ではないことがわかってきた。
それでは、いったい何が腰痛を引き起こす原因なのかというと、それは意外にも誰もが抱えている「ストレス」だというから驚きだ。
腰など体の一部に何か異常が起きると、それが神経を通じて脳に伝わり、異常が起きたことを痛みとして認識する。
このメカニズムは、脳のなかの神経伝達物質によって成り立っているのだが、いつもストレスを感じていると、この神経伝達物質に異常が発生して、体と脳の間で情報がうまくやり取りされなくなるのだ。
その結果、脳は、本来なら痛みの信号をキャッチしたら出すはずの鎮痛物質を出さなくなり、通常なら痛みを感じない小さな腰の痛みを強く感じてしまうのである。
つまり、ストレスを抱えた腰痛患者は健康な人に比べて脳の働きが低下しており、それが長く続く腰痛の原因になっているらしい。
こうなると、原因不明の腰痛を治そうと思ったら、まず自分のストレスを解消することが治療の第一歩になるわけだ。
しかし、それぞれが受けているストレスの内容は千差万別で、百人百通りのストレスがあるため、それを解消するのも個々のスタイルに任せるしかない。
痛みを軽減するためには、できるだけ精神的負担を減らし、自分が心地いいと思うことをどんどん取り入れてみるのがいい。
生活のなかに好きな色や匂い、好きなデザインや食べ物、好みの音楽などを取り入れて、できるだけ居心地のいい環境をつくってみよう。
そうして脳が喜ぶ状態を維持していくうちに、腰痛そのものが消えるケースも多いというから、チャレンジしてみる価値はあるだろう。
ただし、腰痛とともにしびれやマヒの症状がある場合や、手足に違和感を覚えたり歩くのが難しくなったり、排尿障害がある場合には、早急に整形外科で診断を受けたほうがいいだろう。