「頼りにする」から「頼られる」へ

20代の人にとって親という存在は、ほとんど保護者同然かもしれない。

というのは、同居していれば食事や炊事をしてもらえるのは当たり前で、親のほうも「まだ子どもだ」という意識が強いからだ。

30代になると親子関係に少し変化が現れる。

独立する人が増えるし、子ども(親にとっては孫)が生まれるのもこの世代が多い。

しかし、親子の役割は20代のときとガラリと変わるわけではない。

なぜなら、子どもはまだまだ親を頼りにし、孫の面倒を見てもらったり、実家に帰ったときは甘えさせてもらったりといった関係が続いているからである。

 

しかし、40代になるとその様子は一変する。

40代の子どもの親はだいたい70代になるので、親世代がガクッと年をとってしまうのだ。

もちろん、いまどきの70代には、元気でハツラツとしている人が多い。

しかし、年齢が上がるにしたがってあちこちにガタが出てくるのは当然だし、ガンの羅患率も年々高くなってくる。

病気や死がぐんと身近になり、精神的にも弱くなってくる。

また、加齢による認知症の増加も見逃せないだろう。

年齢を重ねるごとに認知症の割合は確実に増え、90代に達すると何と半数以上が認知症といわれている。

つまり親子の関係が逆転し、子どもが親を頼りにするのではなく、親が子どもを頼りにし始める年代、それが40代なのだ。

 

しかし不思議なことに、ほとんどの人は、「自分の親だけはいつまでも元気で、ボケずに死なない」と思っている。

50代にもなると、さすがにそんな気楽な考えの人はいないと思うが、40代くらいではまだその傾向が強い。

それは「いつまでも頼りになる親でいてほしい」という願いが見せる幻想なのかもしれないが、残念ながら現実はそれほど甘くはない。

親は確実に弱るし、着実に死に近づいている。

自分自身、40代に入ると、どんな人でも「ああ、無理がきかなくなったな」と思うだろう。

親世代はそこに20~30年がプラスされるのだから、衰えは比べものにならないほど深刻だ。

その現実から目をそむけている人ほど、いざ親が倒れたり寝込んだときにあたふたするものだ。

「いつまでも子どもではいられない」ということを肝に銘じなくてはいけないのが40代なのである。