初期では分かりにくいアルツハイマー病は、医師でも判断がつけにくいものなのです。

特に、ちょっと危ないと思われる行動は、「最近、怒りっぽくなった」感じが見受けられるとアルツハイマー病へ近づいている傾向なのかもしれません。

老人性のボケであるアルツハィマー病と脳血管性痴呆について、おおまかなイメージをつかんでもらうために、ここでは実際にあった例をあげて説明しましょう。

 

アルツハィマー病になる傾向の例

「響子さん(仮名:68歳)の性格が変わったと家族が思ったのは、ちょっとした出来事がきっかけでした。

娘の静香さんが植木の手入れをするためのハサミを外に出しっぱなしにしていたことを、響子さんがくどくどと叱ったときでした。

静香さんは数年前に結婚して家を出ていましたが、その日はたまたま実家に帰っていたのでした。

「そんなに怒ることはないだろう」

夫の宏さんは呆れたようにいいます。

しかし、それを聞いてさらに響子さんは怒り、だらしがないのは父親である宏さんの影響だといい出しました。

半年くらいして、静香さんが実家に顔を出したとき、台所を見て驚きました。

同じような調味料が、冷蔵庫や棚にたくさん入っていたのです。

響子さんに聞いても、すぐになくなってしまうからといいわけをするだけでした。

さらに半年後には、響子さんは何度も同じことを家族に尋ねるようになり、さすがに宏さんも妻の様子がおかしいと思い、医者へ連れていくと、ボケの検査で中程度のアルッハイマー病であると指摘されたのです。

 

アルッハイマー病は、脳の神経細胞が急速に壊れていく病気

しかも、新しい記憶をつくる海馬からまっ先に障害されます。

そのため、症状は記憶力の低下から始まり、初期のうちは老化による「もの忘れ」との区別がむずかしくなります。

しかし、初期のちょっとした性格の変化、記憶力の低下はだれも気がつかないのが本当のところです。

医者でも診断がつかないことが多いのです。

家族の人が病院に連れてきたときには、牧子さんのケースのように、すでに症状がかなり進行しているという場合がほとんどです。

現在のところ、アルツハイマー病のはっきりした原因はわかっていません。

そのため、少し前までは有効な治療法もなかったのですが、現在は、早期に発見すれば、薬で進行を遅らせることができるようになっています。