不妊の原因の半分は男性です。
不妊は女性の特有の疾患であり、女性の側にだけ原因があると考えていませんか?
しかし、それは大きな間違いです。
実際には、不妊の原因は3分の1は女性、3分の1は男性、3分の1はその両方にあるものと考えられています。
① 精子が少ない、運動が悪い、受精しにくい
② 全く精子がいない (無精子症)
男性側に不妊の原因がある場合、これらの理由があげられます。
①が原因のときは生活の指導(禁煙や食事療法、規則正しい生活など)からスタートし、薬による治療や、精索静脈瘤がある場合は手術が行われる場合があります。
②が原因のときは、TESE(精巣内精子採取術)という手術で精巣から直接精子を取ってくる必要がある場合があります。
精子の問題のほかにも、満足にセックスができない、という悩みを抱えて、不妊外来に訪れるカップルも少なくありません。
セックスのいろんな悩みを抱えるカップルがいます。
原因はおおざっぱにわけて、3つあります。
① 未完成婚
夫婦なのに一度もセックスができない、という場合。
セックスが普通にできるカップルには想像ができないかもしれませんが、いろいろな事情があり、セックスができないカップルがいます。
② 勃起障害
今までは普通にセックスできていたのに、子供を作ろう、と思うと勃起ができなくなってしまう場合があります。
③ 射精障害
オナニーはできて、射精もできる。
勃起はできるので、膣の中に挿入することもできる。
だけど、満足に射精することができないないのです。
男性不妊の外来には、基本的には精子が少ない人もしくは無精子症の患者さんが来院されることが多いのですが、最近は勃起障害や射精障害患者が急速に増加しています。
勃起障害はPDE5阻害薬という特効薬(例えばバイアグラ)がありますが、射精障害はなかなか治らず、結局は体外受精などの生殖補助医療に頼らざるを得ないという現状です。
男性から出た「精子」が女性の中にある「卵子」と出会い、受精することで、赤ちゃんは初めて生を授かります。
卵子だけでも、精子だけでも赤ちゃんはできません。
近年は「卵子も老化するため、35歳以降は妊娠しづらくなってきている」というデータが出てきています。
そして、卵子だけでなく、精子も老化するということもわかってきました。
つまり、不妊症の原因の半分は、男性側にあるのです。
女性だけが不妊治療をがんばってもダメなのです。
2人で協力して治療をすすめていくことが、とても大事なことです。
◆射精したけど精子がいない・・・
精子と精液は別もので、普段皆さんがペニスの先から出している白い液体は精液であり、必ずしもその中に精子がいるとは限りません。
本当に精子が出ているかどうかは、出てきた精液を顕微鏡で覗いてみてみないとわからないのです。
【無精子症】
精子の中に精子がいない状態、これを『無精子症』といいます。
精子は睾丸(精巣)で作られ、そして、精管を通って精子は運ばれ、前立腺に到達します。
射精するときには、その精子と前立腺液、精のう液が一緒になって尿道より射出されます。
これが精液です。
無精子症となる原因は、2つあります。
① 精巣の中で精子が作られていない場合
② 精子の輸送管である精管の途中がつまってしまっている場合
たいていの無精子症の人は、結婚をして子供を作ろうとした時に初めて気がつきます。
無精子症であると気づいた人は、「自分は子供ができないのではないか?」と深く悩まれる場合も多いです。
【無精子症でも子供を作れる可能性】
精子が出なければ、当然子供を作ることができません。
しかし、生殖補助医療が進化している昨今では、たとえ無精子症でも子供を作るチャンスがあるのです。
①精管をつなぎなおす手術以前にパイプカットしてしまった人は、カットしてしまった部分を、またつなぎなおす精管精巣上体管吻合術の適応になります。
クラミジアなどで精巣上体(副睾丸)が詰まってしまった人は、精管精巣上体管吻合術の適応です。
また、クラミジアなど性感染症も不妊の原因になります。
精巣上体というのは、タマの横にある精子の通り道で、ここが炎症を起こすと硬くふれるようになり、閉塞の原因になります。
タマの横にゴリゴリふれるものがある人は注意しましょう。
精管吻合術は非常に高度な技術が必要となります。
この手術ができない場合は、次の方法が適応になります。
②MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)
もともとタマの内で精子ができていない人、もしくは非常に少ししかできていなくて精子が外に出てこない人は、この手術の適応になります。
タマを陰のうから外に出して、中を顕微鏡で覗きながら精子がいそうな場所を探す手術です。
この方法であれば、少数の精子しか見つからない場合でも、顕微授精(精子を卵子の中に針で直接入れて体外受精させる方法)を用いれば子供を作ることができます。
いずれにしろ、原因を確かめて、適切な治療をする必要があります。
ご希望がある方は、不妊専門クリニックもしくは不妊治療をしている泌尿器科を受診されることをおすすめいたします。