相手が反発する断り方、 納得する断り方

本当は「ノー」と言いたいのに、どうしても断りにくい話というものがある。

相手が目上の人であったり、親しい人間であれば、なおさらあからさまな断りはできない。

だからといって、断らなければこちらが困る事態に陥る。

ノーの言い方は難しい。

女性に交際を申し込んだが断られたため、家に押しかけて家族に切りつけたという事件がかつてあった。

たかが交際を断られたくらいで、そこまで凶暴な行為に及ぶというのは信じられない気がするが、その根底にあるのは、やはり人間関係の崩壊ということではないかと思う。

また、うまく断りが伝わっていれば、ひょっとして、そこまでのことには至らなかったと言えるかもしれない。

ノーをうまく言えることは、人間関係を正常に保つためには必要なことだろう。

断り方の上手下手に関係なく、断るという行為は、少なからず相手の期待を裏切るものである。

どんな言葉で飾ろうとも、相手が抱いていたほのかな希望も打ち砕いてしまうものを持っている。

だから、断ったときには、必ず何らかの反発や波乱が引き起こされることを覚悟しなければならない。

ただし、断り方によっては、相手の心理的なショックを和らげることもできる。

そして、相手が反動で激しく反発してくるのを抑制することもできる。

うまい断り方をするための原則は、あくまでも自分の主張を押し通さないということではないかと思う。

つまり、相手の立場も尊重しながら、自分の意思を相手に理解してもらうのである。

 

たとえば、「ご意向はわかりますが、まことに甲し訳ありません」といったように、本当は断りたくないのだが、仕方なくそうしているというオーブラートに包んで、断ることが基本となる。

断るほうも、誠意をもってそう言っているという意思を示すと、ショックを和らげる言い方になる。

しかし、同時に、きっぱりした姿勢で断らないといけない。

断れば相手が多大な心理的なショックを受けるだろうと予想して、それを和らげようとするあまり、「考えておきましょう」というように猶予をおいてしまうと、ときには「あれはどうなった」と、いつまでもせっつかれることもある。

また、「これこれの条件がクリアできたらご承諸できるんですが」といったような、相手に期待を持たせる言い方はあまりよくない。

相手に希望を抱かせ、期待を持たせてしまうからだ。

相手は条件さえ満たされればオーケーしてくれるものと思い込む。

ただし、何でも反対ではないが、何を言われても断るという完全拒否の姿勢をあらわにしていると、相手は強く反発してくる。

また、一方的に断り続けるのもあまり賢い方法ではない。

まず、積極的な姿勢を見せながら、相手の言うことに耳を傾けてみる。

そして、きっぱりノーを告げる。

さらに最後までノーを押し通す。

これしかいい断り方はないような気がする。

企業のクレーム処理係の人は、まずはじめにじっくりクレームをつけてきた個人の話を聞いてガス抜きをしてから善後策を講じるという。

そうしないで、最初から企業の立場を理解してもらおうとすると、相手はますますいきり立ち、収拾がつかなくなることが多いという。

どんな怒りを持っていても、多くの人は話をよく聞いてもらえるだけで気持ちが落ち着いていくものである。

つまり、この場合、苦情処理係は相手の話をよく聞くことだけで「ノー」と言ってるようなものだ。