誘うときは、あくまで気軽にダメモトで

「相手の都合を考えすぎて、人を誘うことができない」と悩んでいる20代の女性がいる。

とくに新しい人間関係において、それができないという。

同じビルの隣に入っている会社に、同年代で好感の持てる女性社員がいる。

ときどきトイレなどで一緒になり、ちょっと会話を交わす機会がある。

気が合いそうなので、一度、食事でもしながらゆっくり話をしてみたい。

こんなときは、「今度、一緒に食事に行きませんか?」といえばいいだけなのだがそれができない。

いったい、なぜなのだろう。

本人は、「会社が違うから仕事のこともわからないし、もしかしたら恋人と約束があるかもしれない。無理に誘って迷惑をかけたくないから」と理由づける。

しかし、本当のところは、断られるのが怖いのではないか。

 

人を誘ったときに返ってくる答えは、「YES」「NO」ともに半々、フィフティフィフティである。

「いいわね、行きましょう」が50%、「ごめん、行けないわ」が50%。

そのどちらであっても不思議ではない。

しかし、とかく人は断られたほうを大きくとらえすぎてしまう傾向がある。

「やっぱり嫌われていたのではないか」

「突然、誘ったりして驚いたんじゃないか」

そんなふうに、自省した結果になるのを恐れて誘えないのだ。

一方、返事をする彼女の方も、同じなのだろう。

人を誘うのが苦手だという人は、「自分は、断られるのがイヤなカッコつけだったんだ」と気づくこと。

そして、「半々の確率で、断られて当たり前」と割り切ることである。

自分が興味を持った人は、もっと積極的に誘えばいいと思う。

だが、そのとき心得なければならない距離感がある

まず、やってはいけないのは「大ごとのように誘うこと」だ。

「気楽に断れる」状況でないと、相手に負担をかける。

それには、誘う側も気楽でなければならない。

 

恋愛下手な男は、この「気楽さ」ができない。

「今日も暑いね。そこらでビールでも一杯飲んでいかない?」なら相手も気楽に応じられるし、断れる。

だが、「夜景の見える高級レストランを予約したんだ」では重すぎる。

ナイターの外野席くらいなら気楽におごってもらえても、オペラのS席となると、そうもいかない。

だから、最初は軽めからスタートして、反応を見ながら少しずつ距離を縮めていくのがいい。

 

ところが、下手な人は、いきなり最初から距離を縮めようとして大ごとに誘いをかける。

そして、断られてはショックを受けるのだ。

私がこの自説を説いていたら、若い男性から反論を受けた。

「でも、いきなり行った店が満席だったりしたらカッコ悪いじゃないですか。せっかく誘うんですから、やっぱりいい店のいい席を予約しておかないと」

この気負いが重い、ということに気づく必要がある。

満席だったら、

「ごめん満席だ。別の店へ行こう」

これでいいのだ。

それでも心配なら、歩きながら店に電話を入れて「いまから二人入れますかっ」と聞けばいい。

ふらりと寄った店が満席だったら、そのままおしゃべりしながら空いている店を探せばいいだけの話ではないか。

そして、「さっきの店、人気があるんだね。今度は予約して行ってみようか」といえたら、さらに距離を縮めるチャンスも生まれる。

もちろん、「考えておく」と断られるかもしれない。

でも、それでいいではないか。

そのときに、いちいち「自分を嫌いなんだ」などと深く考えすぎないこと。

単に予定が合わなかっただけかもしれない。

「ある人に合う靴も、別の人には窮屈である。あらゆるケースに適用する人生の秘訣などない」

 

ひとを誘うときは特に考えてほしい、事それは、

人には、それぞれ事情があり、生活環境をはじめ、好みも考え方も違う。

「断られないように誘う」方法などないのだ。

ダメモトで気楽に声をかけるのが、いちばんいいのである。