人のプライドをくすぐれば、心のバリアが解け高感度がグンと上がる。

相手をほめて、こちらのペースに持っていく人間関係のテクニックのひとつに、相手の知的プライドをくすぐるという方法がある。

たとえば、あることを自分の知識や判断について相手に説明するときには、

「これについては、あなたならすでにご存じのことでしょうが・・・」

といった前置きをしておいてから、説明するという方法だ。

 

こういう一言を前置きするだけで、相手は自尊心をくすぐられ、話を聞かねばならないという心理に追い込まれるという。

どうして相手の知的プライドをくすぐる必要があるのか。

それは、自分自身を無能だと平気で言ってのける人でも、本心では自分を愚かな人間だとは思っていないことが多いからである。

また、誰でも人前で、自分が愚かだと思われるようなことをしたくないとも思っている。

もし、自分のことを本心から愚かだと思っていたとしても、他人から自分の愚かさを指摘されたときは嫌な気持ちになる。

よくいるのだが、頭ごなしに、「何回言ったらわかるんだ、バカ!」とか、「どうしようもないな、できの悪いやつに教えるだけで疲れるんだよ。これはだな・・・」とやられては、素直に人の言うことも聞けなくなる。

それをこんなふうに言われたらどうか。

「よくがんばっている君でも失敗が続くこともあるんだね。もう一回だけ教えるけど」

つまり、たいていの人が、知的だとか、教養があるとか、人生に熟達した訳知りの人間であると思われたがっているといえる。

それを全否定されては人の話も耳に入ってこない。

心にバリアができてしまうのだ。

 

催眠術師はこのテクニックをうまく使っているといわれている。

催眠術をうまくかけるには、最初に、「催眠術というものは、頭のいい人のほうがかかりやすいものです」と説明するとよいというのだ。

なるほど、そんなふうに言われてしまうと、催眠術をかけられるほうの人は、自分は教養が高いから催眠術にかかりやすいかもしれないと考えはじめることだろう。

そう考えはじめたときには、すでに自ら催眠術にかかりやすい心理状態に追い込んでいるということになる。

だから、この人と仲良くなりたいという場合、「頭のいいあなたならわかると思うけれど」とか、「ファッションセンスのいいあなたなら」といった調子で、相手のプライドをくすぐりながら話すと好印象を持たれることになる。