返事は「無理だ」「できない」 で始めない
他人から何か協力してほしいと頼まれたとき、どう返事すれば、人間関係を壊さずにすむのだろうか。
もちろん、都合があってできないときは、遠慮などせず「無理だ」「できない」とはっきり返事をしたほうが、あとあとのことを考えてもいいことだろう。
「やりましょう」と言ったものの、結局できなかったときのほうが信用をなくしてしまう。
とはいえ、いつもできる最低限のことしかしないというのでは、頼りになる人間という印象を得ることができない。
「できない」と返事をする場合には、いろいろなケースが考えられる。
一つは、本当はやろうと思えばできることだが、相手をまだ信用していないためにできない場合。
二つ目は、どうも条件面で折り合いそうにないといったときに、用心のために言う場合。
三つ目は、自分を高く売り込もうとして、もったいぶって「できない」と言う場合である。
しかし、頼むほうは困っているから頼むのであり、また、「この人ならやれるだろう」と思っているから頼むのであろう。
そんなときに「できない」と言下に拒絶されてしまったら、落胆が深くなる。
「無理だ」「できない」という返事は、こちら側の思惑もあるが、同時に、相手がその返事をどう受け取るかということも考えてしなければならないと思う。
相手のことを大切に思うなら、まったく協力できないという完全拒否の姿勢はやめたほうがいいだろう。
はっきりものを言うことは必要だが、その言い方が問題なのだ。
頭から「ノー」と完全に拒否するのは印象を悪くするが、相手の言うことをよく聞いてから「ノー」の返事をするのは、印象をよくすることになる。
自分の感情や都合ばかりを優先していると、あまりいい人間関係は育たない。
利用する利用されるという関係しか育たなくなるからだ。
相手の感情や状況を慮りながら、相手によかれという姿勢で返事をするというのがベターであろう。
それが、よい人間関係を成り立たせるための基本姿勢となる。
その意味で、「無理かもしれませんが、なんとかしてみます」という言い方が印象をよくする。
これは、ある意味で、まさかのときの予防線を張るための言い方だ。
やってみたらやっぱり無理だったというときでも、その仕事を遂行することの困難さを、相手にあらかじめ伝えることになるからだ。
わざわざ無理を承知でやつてくれたと感じるとき、印象は最大によくなるはずだ。