家と会社以外の「居場所」をつくる
会社や仕事のなかに「自分の居場所」があることは、とても幸せである。
しかし、その幸せが大きければ大きいほど、定年になってそれを失ったときの喪失感は計り知れないものがある。
現役時代に仕事一筋で生きていた人は、定年後に自分の拠り所をなくすと、急に精気を失ってしまう。
うつ状態になる人も増加の傾向にある。
その原因のひとつは、平均寿命が昔より延びた点にあるのではないか。
昔は定年になってしばらく楽隠居を決めこんでいればお迎えが来てくれたのに、現代ではそうはいかない。
定年が60歳とすると、その後の平均余命は、男性で30年近く、女性なら35年以上ある。
もう一度人生を送るのに十分な時間である。
その時間を、自分の居場所もなく過ごすのは、耐えられたものではない。
だが、定年などまだ先の話の40代にとって「定年後に備えて、仕事以外に自分の居場所をつくっておくべきだ」とすすめられてもピンとこないだろう。
しかし、老後のための生活資金は40代から蓄え始めるのだから、自分の居場所の準備も始めるべきなのだ。
特に男性は、定年後は妻と二人で暮らすのだから、家が居場所と考えている人が多い。
ところが、そのころには、奥さんは地域のコミュニティーや趣味のサークルで自分の居場所をたくさん確保しているので、奥さんにとって家は居場所とならない。
ただ単に、夫のほうの片思いだろう。
このようなミスマッチが起きるのは、「居場所」をただ居る場所と思っているからだ。
居場所というのは、自分の存在が実感でき、自己愛が満たされる場所なのである。
つまり、そこには、自分を必要としてくれたり認めてくれる相手が必要になる。
このような濃密な人間関係は一朝一夕では築けない。
だから40代からでもけっして早すぎるとはいえないのだ。
趣味のサークルでもいいが、子どもの学校行事や町内会、マンションの自治会など積極的に顔を出してみてはどうだろうか。
まったく利害関系のないところで、ひとつになって考えていく。
そのような揚は、会社以外でも自分の存在価値を実感させ、生きがいになるだろう。
このように、「定年後に備えるため」などという消極的な理由ではなく、積極的に自分の居場所を求めてみよう。