「夜、どうしても眠れないとき」はどうする?
なかなか寝付けない。寝ても、夜中に何度も目が覚める。
精神的な疲労を抱える人の多くは、こうした悩みを持っています。
疲れているのになかなか寝付くことができない。眠ろうとすればするほど、目がさえてきて眠れない。明け方になってやっとウトウトできるが、すぐに起床時間を迎えてしまい、ますます疲労感が重くのしかかってくる。
30代の男性が言っていました。
彼の場合、鬱病にかかってしまったため、日中は抗鬱剤を服用していました。
その薬の影響もあって、夜になかなか寝付けません。
そこで彼は睡眠薬のチカラを借りてなんとか睡眠をとっていました。
しかし、そのような生活を続けていると、日中も頭がボーッとして、一日中ゴロゴロと家の中で過ごすことになってしまいました。
そんな生活から脱却したいと思い、睡眠薬の服用をやめてみようと決断。
睡眠薬を飲まないまま、ふとんの中に入り、寝てみる。
なかなか眠れないのなら、本を読んだり、テレビを見たり、好きなことをしていてもいい。
そのうち、なんとなく眠くなってきたなら、そのまま眠ればいいと判断しました。
その男性は、もう1つ医者からの助言の実行を試みました。それは、
「 朝、目覚めたとき、寝床で大きく伸びをして、『ああ、よく寝た』と思うようにしましょう。たとえ二時間しか眠ることができなくても、やはり『ああ、よく寝た』と思うようにするのです。実際、二時間はよく寝ているのだから、そのことを評価するようにして欲しいのです。これだけは守ってください」
すると、彼の異変が・・・
彼の顔は、一週間前とは見違えるほど生気が戻っていました。
話を聞いてみると、この一週間で睡眠薬を飲まずによく眠れるようになったというのです。
最初の二日くらいはなかなか眠れなかったようですが、三日目にスッと眠ることができるようになったと、うれしそうに話していました。
彼の話にはさらに後日談があります。
よく眠れるようになったことで、体の調子もよくなり、医者と相談して抗鬱剤の服用も減らしていくことにしました。
そして、数週間後には抗鬱剤を服用しなくても、ふつうに日常生活を送ることができるようになったのです。
この事例からわかるように、眠れないときのもっとも効果的な対処法は、無理して寝ようとしないことです。
ですから、私は「眠れないときは、時間を得したと思いなさい」とアドバイスしています。
寝付けないときに「眠らなければいけない」という思いが強すぎると、かえって神経が研ぎすまされ、眠れなくなってしまいます。
そういうときは、無理に眠ろうとせず、貴重な時間をもらったと思うことです。
その時間に、好きな本を読むこともできますし、たまった書類を片付けることもできます。
これからの仕事の段取りを考えるのもいいでしょう。
このように、眠れないことを否定的に考えるのではなく、肯定的に受け止めれば、時間ができたことに満足感が生まれます。
そうすればドーパミンが分泌されやすくなり、自然と眠くなってくるはずです。
そして、もう一つ大事なことは、たとえ睡眠時間が二、三時間であったとしても、目覚めたときは大きく「伸び」をして「よく寝た。気持ちいい」と思うことです。
実際の睡眠時間がわずかでも、眠った時間を肯定的にとらえることで、疲労感や虚脱感を軽減することができるのです。