「あなたはこれね」と、人の役割を勝手に決めるな

人はみな自分を高く評価し、自分を大切に思う気持ちを持っている。

自分に自信がなさそうに見える人でも、控えめでおどおどしているように見える人でも、本当はそうしたいわけではなく、自分を少しでも輝かせたいと思っているのです。

「恥ずかしがり屋だけど、目立ちたがり屋」という人もいます。

人前に出ると赤面したり声がうわずったりして、恥ずかしい。

でも、本当はスポットライトを浴びたい。

こういうジレンマを持っている人は意外に多いようです。

 

こういう人の気持ちをまるで理解できない、いや考えもしない人がいます。

どういう人かといえば、「仕事の段取り」で評価されている人で、彼らの発する言葉は、恥ずかしがり屋を大いに傷つけているのですが、まったく自覚がありません。

例えば、社員旅行の宴会で全員が何か出し物をやるとき、「△△さん、ひとりじゃ恥ずかしいだろうから、オレたちと一緒に、課長のバックコーラスでいいよね。じゃあ、決まり!」と、勝手に決めてしまう人です。

目立たない自分が一発逆転するためのせっかくのチャンスですから、女子社員にウケそうなモノマネを練習しているかもしれないのに、です。

無口で恥ずかしがり屋なのを自覚し、黙って演じられるマジックを日夜練習しているという人も、実際にいます。

そういう「段取りマン」に限って、恥ずかしがり屋の人に気づかって、親切心で「過不足のないように仕切ってやった」という気持ちが強いものです。

けれども、「恥ずかしがり屋の目立ちたがり屋」という人も多いことはすでに述べた通りですが、そういう人のプライドを傷つけ、ありがた迷惑になっているのです。

 

これを避けるためには、相手が自分の希望を口に出しやすいように、やさしい言葉の疑問形で話しかけるのがいいのです。

「ひとりで出し物をやりますか? 誰かと組みますか? もし決まらないようなら、いってくださいね。一緒にバックコーラスをやりましょう」と。

気が小さい人ほど、傷つきやすいものです。

どうせ気づかいするなら、余計なお節介ではなく、プライドを持たせようとする心配りが大切なように思うのです。