50代からは、しなやかな「細マッチョ」を目指す。
50代の人が目指すべき体とは、若いころのようなマッチョな体ではない。
しなやかな「スポーツカーのような体」を目指すべきなのだ。
スポーツカーのような体とは、見かけは中肉からやや細めで体脂肪が少なく、しなやかで、必要十分な筋肉を持つ体だ。
「細マッチョ」などと言えばわかりやすいだろう。
陸上競技の選手で言うなら、400mから800mを走る、中距離選手である。
見た目も美しく、機能的にも優れた体。
そんな体を目指した運動習慣づくりを食習慣とともに身につけよう。
運動を始めて1カ月で変化が生じ、3ヵ月もすれば、その効果を確信できるだろう。
そして1年も続ければ、運動なしではいられない体になる。
では、どのような運動をしたらいいのだろうか?
運動には「有酸素運動」と「無酸素運動」の2種類がある。
有酸素運動とは、呼吸することで酸素を取り入れ、血液中や体内の脂肪を燃やしながら比較的長時間続けられる運動のことである。
ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリング、エアロビクスなどがその一例である。
無酸素運動とは、短距離走や筋力トレーニングのように瞬間的に強い力を生み出す運動である。
筋肉などに溜めておいたグリコーゲンを主原料とし、酸素を必要としないため、無酸素運動と呼ばれている。
有酸素運動で鍛えられるのは、股関節を動かす大腰筋や、腹筋のひとつである腹横筋などである。
これらの筋肉は、「赤筋」と呼ばれ、エネルギーをつくり出すミトコンドリアを多く含んでいる。
無酸素運動で鍛えることができるのが、「白筋」と呼ばれる筋肉だ。
白筋は意識して鍛えないと赤筋以上に減少していき、その代わりに脂肪が溜め込まれる。
その結果、基礎代謝がさらに落ちて、太りやすい体質になってしまう。
そこで、食事療法に加えて、有酸素運動と無酸素運動を効果的に組み合わせていくことが大事だ。
赤筋と白筋のほかに、ピンク筋という筋肉がある。
これは、有酸素運動に徐々に負荷を加えて、息が切れるようになる少し前の運動で動く筋肉だ。
ミトコンドリアを活性化させて長寿遺伝子をオンにするには、有酸素運動により赤筋を刺激し、それを少しずつきつくしていって、ピンク筋を強化するぐらいでちょうどいい。
まず取り組むべきは、有酸素運動である。
ウォーキングを週に2回、1回30分以上、1~2週間続けてみる。
外出が面倒という場合は、室内でテレビを見ながらペダリング(自転車漕ぎ)を行なうのもよい。
有酸素運動は、始めたら最低30分以上は続けることが必要である。
血液中の脂肪が連続的に消費されて不足状態になると、「AMPキナーゼ」という酵素が体脂肪の分解を促進してくれるからだ。
慣れてきたら、散歩から速歩、速歩から急歩、急歩からゆるいジョギングへ、息が弾む程度から汗ばむ程度へとペースを上げ、次第に時間も長くしていく。
「ちよっときつめの運動」に変えていくことで、効率よく体脂肪を燃やすことができる。
しかし、有酸素運動でも運動強度をどんどん強めてゆくと、徐々に無酸素的な運動に変わってしまう。
よく坂道などを登っていて、苦しくてハアハア、ゼイゼイいうのは、体が酸素をほしがっているためだ。
運動の結果、酸素が消費されると活性酸素が老廃物として残る。
この活性酸素は体をさびつかせ、老化を早めてしまう。
だから、運動するといっても急激に負荷をかけるのは逆効果だ。
次に、健康の維持・増進、メタボやロコモの改善に役立つのが、筋トレなどの無酸素運動だ。
筋肉に負荷をかけることで筋力がアップし、代謝を上げる成長ホルモンが多く分泌されるようになる。
筋トレというとスポーツジムなどに入会してマシーントレーニングを行なわなければならないと考えがちだが、自宅で時間のあるときにやるだけで十分だ。
腕立て伏せやスクワットなどを行ない、自分の体重を利用して少しずつ負荷をかけるようにすればいい。
あるいはダンベルなどを購入し、3キロから始め、5キロ、10キロと増やし、1日に行なう回数も増やしていくとよい。
要は、基本を大切にしつつも自分で無理なく続けられ、習慣化できるスタイルを見つければいいのだ。
筋トレを習慣化すれば、年齢に関係なく、筋肉のついたたくましい体つきになる。
運動習慣づくりを始めたら、もうひとつ習慣づけてほしいことがある。
それは運動が終わった後に、負荷のかかった筋肉を伸ばすなどのストレッチだ。
運動するということは、じつは筋肉が硬く縮んでいる状態なので、放っておくと筋肉が炎症を起こしてしまい、可動域が狭くなる。
その結果、運動能力が落ち、筋肉と骨の結合部分である健を傷つけやすくなる。
それを防ぐのが、運動後のストレッチだ。
とくにしっかり伸ばす必要があるのが、太ももについている大腿四頭筋だ。
人の体のなかで最大の筋肉であり、ランニングするときなどに重要な役目を果たしている。