「動脈硬化の予防にはコレステロールをとった方がいい」は本当か

 

コレステロールは動脈硬化の元凶のようにいわれている。

しかし、近年、これは見直されてきている。

コレステロールが動脈硬化の原因であると思われたのは、動脈硬化を起こした血管壁に付着しているのが、主にコレステロールだったからである。

 

血圧が高いと、血管が破れないようにするために、コレステロールが血管壁に貼りついて保護しようとする。

つまり、動脈硬化の原因は、コレステロールではなく、高血圧だったのだ。

 

その他、コレステロールは赤血球も保護している。

したがって、コレステロールが不足すると赤血球が早く壊れ、貧血を起こす。

また、コレステロールは、女性にとって大切な女性ホルモンの原料でもある。

さらに、ビタミンDや、腸内で脂肪を消化する際に大切な乳化剤である胆汁酸の原料としても重要な働きをしている。

 

ところで、コレステロールは、食物から摂取されるだけではなく、実はそれよりもっと多くの量が肝臓で合成されている。

比率でいうと、一日に必要とするコレステロールの3分の2が肝臓で合成され、残りの3分の1が食物から摂取される。

もし食物からのコレステロール の摂取があまりにも少ないと、肝臓では、不足するコレステロールを、より多量に合成しようとする。

その結果、かえって血液中のコレステロールの量が高いレベルになることがしばしばある。

したがって、余分なコレステロールを肝臓で合成させないためには、食物からある程度のコレステロールを摂取することが必要なのである。

 

心筋梗塞は、冠状動脈の中にコレステロールが詰まって動脈硬化が起きる病気で、以前は命にかかわることが多かったが、近年は、発症後、処置までの時間が短ければ、ほとんど助かるようになった。

心筋梗塞になった人が退院するときには、栄養学級などで食事の勉強をさせる病院が多くなっている。

このとき、たいてい指示されるのは、一日に卵一個と、脂肪分を含んだ牛乳を一本をとるようにということである。

 

いずれも、かなりコレステロールの多い食品なので、今までコレステロールはよくないと思っていた人は、これを聞いてびっくりするようだ。

しかし、これは意味のあることなのである。

つまり、肝臓で余分なコレステロールを合成させないために適当な量のコレステロールを食物から摂取すること、また、血液中のコレステロールが低下しすぎると、脳出血など血管が破れるような疾患を起こすことがあるので、これを予防するという意味があるのである。

つまり、コレステロールに対して、余分な警戒をするのでなく、適度のコレステロールを食物から摂取する方が、動脈硬化をかえって予防することができるのである。