水をたくさん飲んだ方が健康のためにいいか
欧米では水をたっぷり飲むとダイエット効果があり、健康体になるといわれている。
しかし、これは、日本ではそのまま通用しない。
ヨーロッパやアメリカなどでは、日本にくらべてタンパク質の摂取量が桁違いに大きい。
それは肉類を多量に食べているからである。
日本人の場合、150~200グラムのステーキでもかなり重たいと感じる人が多いが、欧米では500グラム以上の肉を一度に食べる人も多い。
このように多量にタンパク質をとっている場合、それが体の中に吸収され、新陳代謝された結果、分解した老廃物は、尿から排池されなければならない。
この場合、尿の中のタンパク質などが分解した排世物の濃度が、一定以上に濃くなると、排池がうまくいかない。
そうなると、体から余分な水分を強引に奪い、排尿しようとする。
しかし、このように強引に水分が奪われると血液の濃度が上がり、また、細胞中の水分が減少してくる。
その結果、血液が粘って血栓ができやすくなったり、また、いろいろな故障の原因になりやすいのだ。
だから、多量のタンパク質を摂取した場合、老廃物を無理なく排世するための尿の濃度には限界があるため、尿を出すのに必要な水分を確保しておくことが大切である。
そこで、かなり多量の水分をとる必要があるし、また、水をどんどん飲み、タンパク質の代謝を促せば肥満も予防できることから、水飲み健康法が提唱されたのである。
ところが、日本人の食生活の場合、一日のタンパク質の摂取量は、せいぜい所要量とされている60ないし70グラム程度が精一杯である。
場合によってはこれさえ割っている場合が多い。
一方、多いのは米などの穀物で、その主体はデンプンである。
デンプンは糖質の仲間で、これが体内で代謝していくと、それに併行して水分ができる。
タンパク質が分解するときには水分はまったく体内で生産されないが、糖質や脂質が体内で代謝するときには、必ずかなりの量の水分ができるのである。
余分に摂取した水分は、塩分が過剰摂取されていないかぎり、どんどん尿から排世されていく。
そこで、タンパク質の排池物が少ないのに、やたらに尿から水分が出ていくことになると、働かなくてもいい腎臓が大いに働かされる結果になる。
そのため、日本食のようなタイプの食事の場合に水飲み健康法を実行すると、腎臓障害を起こしやすい。
したがって、水分のとり方は、ほどほどにとどめるべきなのである。
食事や体質的に違いのある欧米の方法をそのまま日本に取り入れることは危険が大きいことを知るべきである。