「良い娘、良い息子」を一度リセットする

「親の介護は絶対に人任せにできない」と言う人がいる。

親にとっても子どもが介護してくれるのは理想的であるし、それによって親子の絆が深まるなら、こんなに結構な話はないだろう。

しかし、「人任せにできない」という気持ちの裏に、「ヘルパーに任せて自分が働きに行ったら、冷たい子と思われないだろうか」とか、「昔から介護は子どもの務めだから・・・」という世間への遠慮が隠されているのなら、一度その考えをリセットしてみるといいかもしれない。

なぜなら、「親の介護は子どもの務め」という考え方自体が、いまの時代に即していないからだ。

 

ひと昔前の親は「人生60年」が一般的だったため、社会人としての仕事を終えて隠居生活を送り始めると、ほどなくお迎えがやってきた。

そのため、介護が必要になっても長期にわたるケースが少なかったし、介護する子どもたちも若く体力があった。

しかし平均寿命が80歳にまで延びたいま、お迎えはそうそう早くはやってこないため、年をとった子どもが長きにわたって親の介護を強いられるようになったのだ。

さらに、三世代、四世代が一緒の家に住む大家族は激減し、核家族化が進んだことも介護を難しくしている。

家の誰かが代わる代わる年寄りの面倒をみるのと、一から十まで一人の子どもが面倒をみるのでは、肉体的にも精神的にも負担は大きく異なる。

つまり、「親の介護は子どもの務め」が常識とされていたころと現在ではガラリと変わっているのだ。

だからこそ、錆びついたような古い世間体に振り回される必要などない。

もちろん、他人にすべてを丸投げして「自分は親の介護など無関係です」というのでは困るが、何もかも自分ひとりで抱え、一度きりしかない自分の人生を棒に振ってしまうのはもったいない。

 

ある主婦のケースだが、一人娘だった彼女は、90歳近い実の両親を「自分だけで」と一人で介護をしていたために疲れ果ててしまい、自律神経失調症になってしまった。

こんなことにならないように、必要に応じてサポートやサービスを受けて、自分の負担を軽くするのが理想的なのではないだろうか。