親と子どもの「ほどよい距離感」

40代の親が子育てをするなかで必ず通る道が 「子どもの思春期」だ。

思春期とは、児童期から青年期への移行期であり、第二次性徴が現れ、異性への関心が高まる年ごろである。

個人差はあるが、おおよそ11歳から10代後半くらいまでをいうことが多い。

 

このころの子どもは体だけでなく、気持ちのうえでも変化が現れる。

たとえば、いなり反抗的な態度をとり始めたり、イライラすることが多くなったり、妙に親の存在を煙たがったりする。

そのため、思春期を「難しい年ごろ」や「扱いづらい時期」などと表現することが多く、親にとっては面倒な時期としてとらえやすい。

 

しかし、本当に思春期は煩わしいだけの時期なのだろうか。

なぜ、そんな面倒な時期がどの子どもにもやってくるのだろうか。

その理由と真正面から向き合うことが、40代の親業でもっとも大切なことである。

 

はじめに、なぜ、子どもに思春期があるのかを考えてみよう。

思春期を迎える前の子どもたちは親を頼りに生きている。

親がなくては生きていけないからだ。

そのため、親の言うことは基本的に正しいと思い、さまざまな価値観も親から受け継いでいる。

 

それをよく表しているのが、虐待を受けている子どもたちである。

周囲の人間は、「こんなひどい親から、なぜ逃げ出さないのだろうか」とか、「どれだけ親を憎んでいるのだろう」と考えがちだが、子にとって親は絶対的存在であり、虐待を受ける理由を親のせいだとは思わず、「自分が悪いから叱られるんだ」「自分がもっと良い子ならパパやママが優しくしてくれるはず」と思い込んでいる。

親と自分を切り離しては考えられないのだ。

 

話を一般の子どもに戻そう。

思春期が訪れた子どもは、親の言っていることが 「本当に正しいのだろうか」と疑問に思ったり、親の嫌な面などが目につくようになってくる。

これは親を頼りに生きてきた子ども時代と明らかに異なる特徴だ。

 

さらに、理由のわからないモヤモヤやイライラが胸にたまって、反抗的な態度になったり、わざと親が嫌がるようなことを言ってみせたりする。

そうすることで、自分と親の間に距離をとり、親と切り離して「自分」というものを考えるようになるのだ。

これは、子どもが一人の大人になるための大切なプロセスである。

もし子どもが親の存在を永遠に絶対的なものと考え、距離をとらなかったとしたら、子どもはいつまでも独立できず、精神的に大人になれないのだ。

 

思春期に悩んだり苦しんだりするからこそ、「親とは別の存在である自分」が確立され、客観的な目で親を見られるようになる。

とても大切で親しい存在ではあるけれど、親もまた自分と同様に一人の人間であると認識できるようになるのだ。

これが思春期の正体であり、誰にも訪れる理由なのである。