自分の「好き嫌いの感情」をコントロールする心理学

いい友人ができないという悩みの原因は、人を好き嫌いで判断するところにある。

相手を自分の感情評価で選択してつきあっていれば、真の友人がなかなかできなくて当然ではないか。

これは上司や同僚と人間関係がうまくいかない場合にもあてはまる。

ビジネスマンにとってなにが悲劇かというと、そりのあわない上司の下で働くことだ。

会社という組織のなかには、

「上司に恵まれない」

「上司が自分だけをいじめる」

「話しあえる同僚がいない」

「同僚がどうも自分を裏切っているようだ」

など、対人関係の悩みや不信が、網の目のように張りめぐらされている。

だからといって転職でこの問題が解決できるかというと、そうでもない。

次に勤める会社にいやな上司や同僚がいないとはかぎらないからだ。

すると転々と職場を変えざるをえないということにもなる。

転職を繰り返せば、当然、働く条件はどんどん厳しくなっていく。

だから、会社の人間関係からの安易な逃避は、自分自身の破滅につながりかねないといえる。

会社は利潤を追求するために存在する。

そして、会社の規模が大きければ大きいほど、個人の存在は小さな歯車のようになり、黙殺されざるをえない。

組織人として働く人たちもまた、一番かわいいのは自分自身だ。

今、部下のめんどうをよくみる 『ほとけの上司』も、いったん自分につごうの悪いことが起きれば、部下を簡単に切り捨てることもあるだろう。

そして、ふだんは仲のよい同僚も、自己保身のために同僚を裏切るかもしれない。

そうしたことをいちいち気にして不信感を蓄積し拡大していくと、その人はどんどんつきあいがいやになっていくことだろう。

ひいては精神的に落ち込み、絶望感にさいなまれて、自分自身の破滅にもつながりかねない。

こうした悪循環を絶つためには、やはり人を好き嫌いで判断してつきあわないことだ。

もちろん人間だから、好き嫌いの感情があることはしかたがない。

好き嫌いの感情を抱くなといってもむりだ。

しかし、だからといって自分が好ましいと思った人とばかりつきあい、そりがあわない人とはまったくつきあわないというのでは、仕事をうまくこなすこともできないし、世間をうまく渡っていくこともできない。

だからある程度はあい身互いだと割り切り、自分の感情を抑えて、人とつきあっていく必要がある。

これはなにも自分の心に嘘をついて生きていけということではなく、自分がよりよく生きるための方便だと思えばいい。

だれでも人からうとんじられる存在になるよりは、人から認められる存在になるほうがいいに決まっている。

そのために人間を好き嫌いだけで判断せず、余裕をもって人とつきあっていくことが大切になる。