漬物は消化を助け、病気を防ぐ
漬物は、日本全国に多くの種類があり、日常、食卓には欠かせないものである。
昔から野菜の補給に大きな役割を果たしてきた。
漬物が発酵するとき生じる乳酸菌は、健康に大きな意味がある。
とくに、京都のスグキ菜を漬けたスグキ漬けや、ナス、シソなどを漬けた柴漬けは、乳酸発酵を強くした独特の漬け物で、この他にも、各地に乳酸発酵させてつくる漬物は多い。
酸は腐敗を防止するので、いたみやすい野菜を保存するのには都合がよいからだ。
乳酸は、胃の中に入ると、タンパク質分解酵素であるペプシンの働きを促進する。
そのため、タンパク質の多い肉類や豆腐、大豆の煮豆、湯葉などを食べたときなど、最後に漬物でお茶漬けを食べると消化を助けることになる。
ペプシンは胃液とともに分泌されるが、そのままでは活性化できない。
ところが、酸に会うと活性化される。
そのため、高齢で胃酸の分泌が低下した人などでは、漬物などの強い乳酸が胃に入るとペプシンが活性化して、消化液の働きがよくなるのだ。
とくに、ペプシンはタンパク質の消化をするから、タンパク質の多い食事の後で食べる漬物は有用である。
酸味の強い漬物は、乳酸の含有量が多く、また乳酸菌も生きている。
この乳酸菌は、腸内でさらに増殖し、腸の状態をよくする。
乳酸菌が腸内で増殖すると、ビタミンB2やビタミンKといった、体に有用なビタミンを合成してくれるという利点もある。
ビタミンB2は、食品からとる量以上に腸内乳酸菌によって合成されたものが利用されている。
しかも、野菜を多くとったときの方が腸内乳酸菌によるビタミンB2合成量が多くなることも判明している。
このビタミンB2は、一生を通じて十分にとっていると健康や長寿を保持することが知られている。
野菜好きが健康であるというのも、このあたりに理由があるようだ。
さらに、乳酸菌が腸内で勢力をもっているときには、発ガン物質が腐敗菌によってつくられるのを防止してくれるという働きもある。
乳酸菌が乳酸を生産し、腸内が酸性になることと、漬物の材料である野菜のビタミンCが発ガン物質の生成を防止するだけでなく、その毒性も消す働きがあるようだ。
それに、野菜のもつ繊維は、発ガン物質ができた場合でも、それを吸着して、体内に吸収するのを防ぐ効果もあり、何重にもガン防止に役立つということである。
年中、漬物を楽しむ日本の食習慣は素晴らしいものであるといえるだろう。
ただし、これは乳酸発酵させた漬物に限る。
なお、漬物は食塩を多く含むから、よい食品だからといってとりすぎはよくない。
食事の最後に食べて、気分をさっぱりする程度が適当である。