何気ないひと言が、お互いを「無口」にさせる

40代夫婦の妻には「夫との会話が成り立たない」という悩みが多い。

たとえば妻が夫に話しかけても、「ああ」とか「あっそう」といったそっけない返事しか戻ってこなかったり、大切な相談を持ちかけても「仕事で疲れているから後にしてくれないか」「家のことはお前に任せてあるから、好きにしていい」というように、話が続かないのだ。

しかし、40代には人生のきまざまな決断をする場面があるはずだ。

 

マイホームの購入、子どもの進路決定、親の介護問題など、本当なら夫婦で納得いくまで話し合って答えを出さなくてはいけないのに、片方が会話を放棄してしまったのではそれこそ話にならない。

そのうえ、後になって、「何で○Oしたんだ」「君が△したから、こんなことに」と文句を言われた日にはたまったものではない。

相談を拒否され、問題を丸投げされ、責任まで問われた妻に、「離婚」の二文字が浮かぶのもわかる気がする。

 

また、妻がただ自分の話を聞いてほしいときに、「○○したほうがいい」「絶対に口口すべきだ」とすぐにアドバイスや説教をしたがる夫も少なくない。

この場合は、表面上の会話は成り立っているけれど、「心を通わせる」という意味での会話にはならないだろう。

40代は人生の折り返し地点。

ここで互いの気持ちがすれ違い、会話レスの夫婦になってしまうと、老後の長い時間を楽しく過ごすのは難しいだろう。

だからこそ、互いに気持ちよく会話できるよう小がける必要があるのだ。

 

では、会話レスを解消するには、具体的に何をしたらいいのだろうか?

もともとは、夫が妻の話を聞こうとしないのが原因なのだから、「夫が自覚を持って、妻の話を聞くようにすればいい」と思うかもしれない。

しかし問題はそう簡単ではない。

なぜなら、夫を無口にさせている原因が妻にある場合も多いからだ。

 

Gさんのケースで見てみよう。

Gさんは中間管理職、会社では上司からプレッシャーをかけられ、部下からはつきあげられ、ストレスの多い毎日を送っていた。

しかし、家に帰って仕事の愚痴をこばすと、「私だって子どものことで大変なんだから」とか、「それがあなたの仕事でしょ。男のくせに情けないこと言わないでよ」などと、自分の思いを受け止めてもらえない。

さらに、ちょっと語気を強くして反論すると、妻が泣き出してしまうときもあったという。

そんなことが重なるうちに、Gきんは 次第に妻との会話を避けるようになった。

それは、妻への拒絶や無関心ではなく「また、何か嫌なことを言われるのではないか」「傷つけられたくない」という気持ちが根底にあったからだ。

 

夫の多くは、妻から認められたい、尊敬してもらいたいという気持ちを持っている。

会社で傷つけられたプライドを、せめて家で癒やしてほしいというのはごく自然な感情だ。

 

会社で責められ、家でも責められる夫が帰宅拒否になるケースも少なくない。

だからこそ、会話レスの夫婦は夫にばかり対応を求めるのではなく、妻のほうからも話しやすい環境をつくる気持ちが大切なのだ。

具体的には、夫が仕事の愚痴をこばしたとき「そうなの」「大変なのね」「それはつらいわよね」 のように、相手の気持ちをそのまま受け止めるといいだろう。

気持ちを受け止めてくれる人がいるというだけで、ストレスは大幅に軽減されるからだ。

人は誰でも、自分の話を聞いてくれる相手の話は聞くようになる。

 

つまり、「自分の話を聞いてほしいのなら、まずは相手の話を聞く」ことである。