できる人間はリラックスのし方にも頭をこう使う

会議などで自分の意見がうまくいえず、沈黙している人がいる。

これは上手にしゃべれないからというより、下手なことをしゃべって人から変に思われやしないかという不安があるためだ。

つまり、ミスを恐れているわけだ。

こうした人が、たんに「口が重い」とか「ちょっと内気な人」と思われているうちは、まだしもいい。

問題なのは、ともすると「自分の意見をはっきりいえない無能な人間」と思われてしまうことがある。

そうなったら、その人の存在は会社内ではまったくないに等しくなる。

 

こうした最悪の状態に陥らないためには、失敗を恐れないことだ。

心の悩みが高じると、ノイローゼという症状に陥る。

これは、失敗を気にしやすい人によく起こる。

とくに神経質性格の人は失敗を気にしやすい。

過去の自分の失敗をいつまでも気にかけていてくよくよ悩むタイプだからだ。

 

ところが、こうした過去にこだわり続けていると、前進できないで、いつまでも失敗した地点をうろつくことになる。

そのためにいっそうあせりが増し、再び失敗を重ね、失敗の悪循環となり、どんどん自分を痛めつける。

いやなことをいつまでも繰り返し思い出していると、そのいやな記憶はどんどん忘れがたいものになっていく。

だから、失敗を何度も思い出していると、それが再び何度も失敗する原因となるのだ。

 

ただし、ここで注意をうながしておきたいのは、致命的な失敗は、じつは心が充分に満たされたときに一番多いことだ。

すべてに健康を感じているときに、意外に重い病気がとりつくことがある。

自分は健康だと過信して養生を忘れ、ついむりを重ねてしまうからだ。

同じように、成功はウツを招く。

だから、ウツは「成功病」ともよばれている。

 

それまで部下をもたなかったビジネスマンが急に 『長』のつく役職になったり、あるいは長年の研究が完成したときなど、いわゆるハレの場でウツに陥る人もまれではない。

人が急に成功や出世をすると、とたんに大きな責任が加わり、それがプレッシャーとなる。

そのために、自分はこんな地位にいていいのだろうか、本当にこの仕事をやりこなせるだろうかと不安になる。

そして、無意識のうちに自分が得た地位を傷つけ、破壊するような行動に出る。

完成のあとの破滅、いわゆる『荷下ろしウツ』という状態になる。

これも失敗を恐れるからこういう状態になるわけだ。

 

言葉の一つに「一張一弛」というのがある。

一張一弛(いっちょういっし):弦を強く張ったり、ゆるめたりすること。転じて、人に厳しく接したり、やさしく接したりすること。

「礼記」に載っている言葉である。

人間はゴムと同じで、引っ張れるだけ引っ張り続けると、いつかプッンと切れてしまう。

だから、適当なところで手を放さなければならない。

つまり、緊張と弛緩がバランスよく回転していってこそ、うまく生きられるということだ。