免疫とは異物をただちに排除し病気からカラダを守るもの!
ヒトが生き延びるための最重要機構といっていい。
だとしたら大いなる矛盾があるじゃないか。
われわれは日々食事をしている、デザートを食べ、コーヒーを飲む。
どんなに小さくなるとはいえゴハン粒やケーキ、カフェインはカラダにとって異物じゃないのか?
カラダはよくできている。
飲食物は異物ではあるけれど、それらがカラダにとって安全かどうかを判断するのも実は免疫。
OKと判断されたものは通行を許され、NGとなった異物は退治される。
ではその判断、いってみれば入国審査はどこで行われる?
数々の試練をくぐり抜け、最終的には腸で行われる。
食物以外にも、多くのウイルスや病原菌は口から入る。
口の先には腸がある、だから腸。
ここにカラダ最大最強の腸管免疫系という機能が働いている。
免疫力を上げるのは腸にある!大腸と小腸
小腸
この内側には絨毛と呼ばれる小さな突起があり、その下にバイエル板という器官がある。
バイエル板はさまざまな免疫細胞から成り、侵入してきたウイルスや病原菌(抗原)の特徴をたちど
ころに把握し、これらを攻撃·破壊するための抗体を作り出す細胞を用意して、口、目、鼻へと送り
多出す。
これら粘膜のあるカラダ最前線はこれをもとに抗体を作り、抗原をやっつけるのだ。
隣に風邪をひいている人がいても感染しないのは、あなたの腸管免疫機構が元気に働き、抗原との闘いに勝っているからだ。
大腸
ここに集中して棲息しているのが腸内細菌。
腸の動きを活性化し、腸管免疫系を強くしてくれる。
これまた不思議な話だけれど、このヒトの生死にかかわる免疫ラログラムの立役者は実は異物なのだ。
羊水に浮く胎児のときは無菌状態にあるけれど、世に生まれ出るや、 腸内細菌があっという間に増
える、免疫力が身につくのだ。
彼らはいったいどこからやってきて、どうやって増えるのか?
腸内細菌の数や種類は人それぞれだ
カラダの中にはおよそ100兆、500種以上の細菌が棲息してるらしい。
合わせてその重量なんと約1kg。
そう、あなたのカラダの中の1g分はあなたではない。
別の生き物である。
もちろんその多くが腸内細菌で、ビフィズス菌やラクトバチルス菌のような有益菌、クロストリジウムや腸球菌などの有害菌、ときに善行をなし、ときに悪に走るバクテロイデス菌に代表される日和見菌などだ。
有益菌は腸管免疫系を活発にして免疫力を高めるだけでなく、便通をよろしくする働きもある。
そしてここでも不思議。
なぜ病原性のある有害菌が排除されずに生きている?
それも腸管免疫系のど真ん中に?
どうやらこれら有害菌は腸内では免疫反応 起こすような悪いことはせず、むしろ免疫活性化の役に立っているのではないかと、またある種の有害菌は自分に対して免疫反応が起こらないように特別な物質を持っているのではないか、といわれている。
ともかくこれらは平和的に一定の調和を保って大腸に棲息している。
この安定調和状態を腸内フローラと呼ぶ。
まるでお花畑のように、いろいろな色の花が大小まとまって分布しているように見えるからだ。
このフローラはRI民国民(食文化)、個人(生活)、加齢によって異なる。
顔かたちが違うように、腸内細菌の種類、数も違うのだ。
いずれにせよ、有益菌を増やし、免疫系を活発にさせておくことがなにより大事である。
食べて腸内の有益菌を増やせばいい
繰り返すけれど腸内細菌は大腸に棲む。
ということは毎回の排便のたびに減ってしまうことになる。
またまた不思議なのだが、時が経つと、どこからか増えてくるのだ、これが。
どうせ増えるなら有益菌だけが増えてほしいもの。
食品として取り込めばいいじゃないか。
カラダに有益な生きた微生物はプロバイオティクス(だから腸内のそれもプロバイオティクス)と呼ばれ、納豆や漬物、チーズなど発酵食品の中に多く含まれている。
ノーベル賞受賞の微生物学者イリア・メチニコフが ブルガリアに長寿が多いのは人々がヨーグルトを食べているからだ」と唱えたことから、西欧にヨーグルト食文化が広まったのは有名な話。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌(糖を代謝して乳酸を作る微生物)には、腸内のプロバイオティクスと同じタイプ(たとえばビフィズス 菌)があったりする。
むろん、胃で消化されず、生きたまま、大腸に届かないと、あまり意味がないのだが。
減ってしまった有益菌を増やす方法、もうひとつは好物のエサを用意すればいい。
食べて、胃で消化されず、大腸まで届いて腸内の有益菌を増やすものをプレバイオティクスといい、代表はオリゴ糖。
ブドウ糖、果糖などの単糖類が2~5くらい結合したもので、実は母乳にたっぷり含まれている。
食品としてはハチミツ、きな粉などに多い。
毎日ヨーグルトとオリゴ糖をいっしょに食べれば腸内免疫力を強化することができるのだ。