嫌われる上司は、部下を叱ってウサ晴らしする

人前では臆してしまう人、細かな計算が苦手な人、敏速に物事を処理できない人・・・

など、人はある程度の社会経験をすることによって、自分の欠点を自覚してゆくという一面があります。

ですから、ほとんどの人は、自分の欠点をよくわかっていると思います。

 

交渉ごとや営業がうまくいかなければ、落ち込んだり、どうすればいいかを考えたり、策を練ったり、気分転換したり、右往左往しつつ、欠点を克服するためにあがくこともあります。

そんな苦しい局面のときはとくに、上司からのひとことでやる気になることもあれば、さらに気力をそがれたり、自信喪失したりすることにもなります。

「ダメダメ。こんなプランじや。お前みたいな社員がいるから、会社の業績が下がるんだよ。少しは真面目に考えてくれよぉ」

などと、部下の気持ちには無頓着な上司を見かけます。

評価できないプランを持ってきた部下を批判するのはしかたないけれども、社員としての存在を否定するような発言は、誰の利益にもならないのです。

せいぜい、自分のウサを晴らして、すっきりするぐらいのものですが、それさえも長い目で見れば自分のストレスを増やしているだけです。

 

話し方ひとつで、部下のやる気も変わるのですから、ここは同じ叱るにしても、次の発展につながるような言葉選びをしてほしいところです。

「このプランのどこが悪いかわかるか?問題点を書いておいたから、よく読んで考え直して、もっといいプランを出してくれ」

と、例えば、部下本人の存在自体を否定するのではなく、よくない部分を明確にしてヒントを与える方法です。

それが上司の仕事のひとつ、「指導する」ということです。

仕事場は、教育の場ではありませんから、部下を平等に扱う必要もありませんし、根気よくできるまで見守るような教師になる必要もありません。

けれども、精神的に追い込んだり、人格を否定したりするばかりで、部下の能力開発を怠ったのであれば、それは社員、経営者、株主などの関係者に対する背信行為といえるかもしれません。

 

「お前はダメだなあ」と、人格を否定するのではうまくありません。

「ここが間違っている、もう一度考えなさい」という指導をするのが、上司としての、仕事の本領のようにも思います。

それがまた、上司自身が、将来「得をする」起点になると思います。

「後生、恐るべし」といいます。

その部下には、「まだ力がない」かもしれませんが、着々と力をつけて会社を仕切るようになったとき、それはそのまま、上司自身の出世を押し上げることにもなります。